町の材木屋に光を

町の材木屋に光を

  社会ニーズ、社会情勢、新しい工法、法律・制度の改正、流通や情報媒体の変化等。社会は留まることなく変化しています。恒久的な考えや理念はありますが、今最高のカタチであっても未来永劫に良しというカタチはないと言っても過言ではありません。特に昨今の住宅建築に関しては激変の時代となっております。住まいづくり・家づくりは飽くなき探求心をもって日々勉強が必須となります。これがない工務店・設計者はいずれ無くなる事になるでしょう。

 

 という訳で、今回もベンチマーク見学会に行ってきました。ベンチマーク見学会とは優れた会社を見学する事です。今回は材木屋を見学しにいきました。工務店なのになぜ材木屋?と思いましたが、とても良かったのでここで紹介します。

 

 訪れたのは香川県の山一木材さん。この山一木材さんは業界のスジと社会理念を大切にする素晴らしい会社。今時珍しい会社かもしれません。

 

 さて、ごく一般的な普通の材木屋について書かせて頂きます。

かつては材木屋を中心とした工務店のある一定のまとまりがありました。工務店は必ずこの近場の材木屋で材木を買っていたものです。しかし、不景気と呼ばれている昨今、「安かろう良かろう」のデフレの時代となり、それまで懇意にしている近場の材木屋に100%発注していたものが、より安くを求め、だんだんと近場の材木屋で買わなくなってきました。それに追い打ちをかけ構造材のコンピューター設計による機械加工(プレカット)が台頭し、莫大な設備投資が必要なためこれを導入できず、材木の主体である構造材が受注しにくくなりました。また、新建材と呼ばれるメーカーの工業製品の普及により、家一軒の材木率が減ってきました。そもそも、住宅そのものの建設需要も年々減っています。これらの要因で売り上げが低迷し、在庫の縮小、人員縮小などの経費削減という負のスパイラルが進んできました。かつては、材木屋に言えば直ぐに現場にもって来てくれる、余っても返品できる、材木について相談したい事があれば経験豊かで知識の高い社員がいた。といったように、近くの町の材木屋に発注する利便性がありました。しかし、この負のスパイラルにより、近くの町の材木屋に注文するメリットが利便性でも、価格面でも、品質面でもなくなってきました。そのため多くの工務店は遠くの製材所に直接プレカット(構造材)を注文し、その他の足らずの分だけ近くの町の材木屋に注文するようになりました。また、ホームセンターの充実化・普及により、こちらで材木を購入する工務店や業者も増えてきました。結果、全てと言っていいほど町の材木屋は今や存亡の危機となっています。明石でも大手の材木屋が数年前廃業となりました。

 

 私は、常々自分自身の知恵や力は小さなものだから、皆が助け合って、和を大切にすることにより一つの大きな事が成せると思っています。餅は餅屋といいます。建築は本当にたくさんの職種で出来上がっています。工務店は全体をコーディネートする取りまとめ役。各分野については専門職の方がよっぽど良く知っており、経験もあります。ですから、これら専門職がチームとなり、全ての職種がWin-Winとなるような関係でないと、私が気づかない情報の提供や提案、不具合がある時の助言などが無くなってしまい、ひいては手抜き工事もあり家自体の品質の低下に結びつくのではないかと思っています。ですから、私は昔からある業界のスジというものを大切にしたいと考えております。「安かろう良かろう」ではなく「安かろう悪かろう」ではないかと疑い、安いものを購入する場合はなんで安いか理由を理解してから購入して頂きたいと思います。但し、業者・職人の言いなりではなく、目を光らせ、お客様のためにならない悪い業者や職人についてはチームとは言えませんので変えていく必要があります。

 

 さて、前置きが長くなりましたが山一木材の話です。山一木材も同様に売り上げが低迷していたようです。多くの材木屋が生き延びる為に工務店化し、自ら営業し、物件を受注しているところも多くあります。山一木材さんが偉いのは営業はするが、自ら受注するのではなく、材木屋が窓口となって良い工務店を紹介するという事です。その代り紹介された工務店は山一木材から必ず材料を買う事にしています。今までお世話になった工務店から仕事を奪うのではなく、工務店に仕事を紹介する事により売り上げを伸ばすという方策です。こうすると仕事の奪い合いではなくWin-Winで工務店とも良好な関係でいられるという事です。まさにスジを大切にする素晴らしい会社です。しかし、これは材木屋にとっては従来普通の事。すごいのが、一般の人に木が素晴らしいという事を気づかせる努力をしているという事。そして木の家のファンになって頂き、売り上げを上げようとしている事。材木屋は通常一般の方に商売せず、取引先のみに対して商売しているところ(B to B)ですので、これは思い切った事をされたと思います。それらを紹介していきたいと思います。

 

 まずは、社長からお話をお聞きしました。謙虚で、自社の苦しみをありのままに伝えられ、自社の売り上げを伸ばす事を試行錯誤されながらいろいろ試してきたような感じでお話されていましたが、ずっと話をお聞きしていると、そんな事よりも本当に木が好きなんだな、木の素晴らしさを多くの人に知って頂きたいんだなという想いがひしひしと感じてきました。

お話は木で囲まれた空間でお聞きしました。取引先の大工さんや工務店の打合せスペースとしても使って良いという事です。事務所を持たない小さな工務店はいっぱいあります。一人親方の大工さんや小さな工務店にとっては有難い話です。お話をお聞きしたスペースは「無垢の床パネル」という置き畳的な正方形の杉板のパネル。木の床ですが座敷のような感覚となります。

 

カウンターや床柱を展示し、お客様に直接見て頂けるスペースを設けていました。銘木がたくさんあり、わくわくします。

 

フローリングの体感コーナー。「くつをぬいで、おあがり下さい。素足で樹種の違いを確認しましょう!」と書いています。木は樹種により、固かったり、やわらかかったり、肌触りが良かったり、温かかったり、冷たかったりするもの。文章や写真ではよくわからないので、実際に乗って体感できる事が面白い。手に取ってお客さんに比べて頂く事は良くするのですが、実際に乗って違いを感じられる事はより現実に近い体感ができます。当社でも様々な樹種の床のパネルをつくって、お客様に体感できるようにしてみようと思いました。

 

木の展示スペース。木についていろいろ学べます。一般に開放しています。木の博物館ともいえると思います。

 

これは木琴だそうです。階段状のところに上から玉を転がすと、良い音色になります。こんな感じで遊び心をくすぐる楽しい展示がいっぱいあります。

 

地元の小学校に木の机と椅子を寄贈されたそうです。この机と椅子が素晴らしい。多機能であることも素晴らしいのですが、それ以上に最高の木育になるアイテムであるという事。

書かれていたことを抜粋します。「木と暮らす学習机について ちいさい時から、ほんまもんを使って、木の気持ち良さや、美しさ、ものを大切にする心や、お手入れ方法を知って欲しいと願い、この学習机をつくっています。つくる時にこだわったこと①日本の山の木を5種類つかっています。杉(スギ):肌にふれるところはやさしい杉を。欅(ケヤキ):ものを出し入れしてよく当たるところは、かたい木、ケヤキを。桜(サクラ):側板のアクセントに、日本の花ともいえる桜の木を。桧(ヒノキ):椅子の脚、強度の必要なところに。栗(クリ):この机、最初に使ったのが、栗熊小学校のこどもたちだったので、栗の木は、かかせられないとこ。さて、どこにつかっているでしょうか。②運びやすくキャスターが前部分についています。③成長に合わせて、机は5段階、椅子は3段階、高さを調整できます。④お家づかい用に棚を用意しています。一番上段はランドセルをぴったりのせることができます。⑤糊(接着剤)を使わずに組み立てています。」

子どもたちは木の違いを自然と感じ、覚えます。ある子どもは校長先生に木の違いを自慢げに話すそうな。ある子どもは「机のケヤキのところを触ると算数がとける」とか「桜に挟まれていつも春のようだ」とかめいめいの豊かな感性で木を感じて頂ける最高の木育だと思いました。卒業の時にこの机の天板をプレゼントするという事。同じ机を6年間使うため、机にはキズやへこみ、汚れなど小学校の思い出がいっぱい詰まっています。素晴らしいプレゼントです。簡単に天板を取り換える事ができ、新品の天板に取り替えてまた新しい一年生の机というように代々使われるようです。

 

「大工さんの刻み小屋」と書かれています。見る事の出来ない大工の仕事を見る事ができます。

 

カフェもあります。奥に見える木々がとても美しい。コーヒーもおいしく頂きました。

 

自分が仕事としてきている事が本当に素晴らしいと誇りを感じ、仕事をする事。スタッフもそれを感じ仕事をして頂く。それを社会に発信し、良いものを広く伝えるという事。我々も見直す事がありそうです。本当に勉強になりました。山一木材さんありがとうございました。

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